本気の瞬間を聴く

眠眠打破にとってゆかりのある “その道のプロ”に聴く、3人に突撃インタビュー!

「本気の瞬間」、「勝負の時間」をテーマに3人のプロの本音に迫りました。熱いインタビューをぜひご一読ください。

<秋山具義氏>

1966年秋葉原生まれ。1990年日本大学芸術学部卒。 1999年デイリーフレッシュ設立。<br />広告キャンペーン、パッケージ、写真集、CDジャケット、グッズなど幅広い分野でアートディレクションを行なう。主な仕事に、東洋水産「マルちゃん正麺」広告・パッケージデザイン、AKB48「さよならクロール」ジャケットデザイン、NHK BS プレミアム「ワラッチャオ!」キャラクターデザインなど。 2009年「ファストアイデア25」出版。

※この記事はRBBTodayに公開されました。

PARCO、シャープなどの広告を始め、金色に輝く「マルちゃん正麺」のパッケージやAKB48「さよならクロール」のCDジャケット、NHK「ワラッチャオ!」のキャラクターデザイン、立命館大学のコミュニケーションマークetc……、様々な広告やデザインを手掛けているアートディレクターの秋山氏。広告の仕事に就いたきっかけや、仕事が大変なときの乗り切り方、ここぞという「勝負時間」について、秋山氏ならではの“仕事作法”についてインタビューした。

---まず今のお仕事に就いたきっかけを教えてください。

秋山:僕が日本大学芸術学部の美術学科(現・デザイン学科)にいた学生時代は1980年代後半でバブル絶頂期で、広告がものすごく元気良かったんです。当時、通学ルートの乗り換え駅である池袋駅にあった広告がものすごく面白かった。大貫卓也さんのやっていたとしまえんとか、西武百貨店とか、PARCOとかいいポスターがたくさんあって。

それで、当時はいろんな企業がメセナというか、コンペや公募展をたくさんやっていたんですね。で、僕も当時「いずみや」、今は「.Too」という名前になっている画材屋さんがいずみやクレセントコンペというのを主催していて、そのコンペの第3回目でグランプリを穫ったんです。そのときの審査員だった葛西薫さんや奥村靫正さん、清水正己さんといったアートディレクターの方たちと知り合ったりしたというきっかけもありました。美大のデザイン科と言っても目指す方向はいろいろあるんですけど、圧倒的に広告の仕事がやりたかったんです。

で、1990年にI&S(現・I&S BBDO)という広告代理店に新入社員として入って、クリエイティブ局に配属されて、99年に独立してDairy Freshという会社を立ち上げ、今に至る、という流れです。

---じゃあ、結構最初から思い通りの仕事に就けた、という感じなんですね。

秋山:まあ、学生時代はH社に入りたかったですよ(笑)。だからすべてが順調だったわけではないです。

---独立されたのはどういうきっかけなんですか?

秋山:会社に10年はいないだろうなっていうのは最初から思っていたんです。90年に入社したんですけど、10年後がちょうど20世紀から21世紀になるタイミングだったんで、21世紀になる前に自分の名前で仕事ができるようになりたいな、と思っていました。

---ちなみに「Dairy Fresh」という社名の由来は何でしょうか?

秋山:これは糸井重里さんにつけてもらったんですけど、そのとき糸井さんが牛乳ブームだったんですよ、確か。「Dairy」は“毎日”の意味の「Daily」ではなくて、“乳製品”の方。LじゃなくてRなんです。だから「新鮮な牛乳販売店」みたいな意味なんですよ。牛乳って白くて新鮮な飲み物だけど、コーヒーを入れたらコーヒー牛乳に、苺を入れたら苺ミルクにもなるし、バターやチーズにも加工される。新鮮なデザインや企画をつくったり、しかもいろいろ加工できたりもする、という意味合いが込められてます。

---それはいい名前ですね。ところで、失礼な質問になるかもしれませんが、「グギ」さんって変わったお名前ですよね?

秋山:本当は「ともよし」って読むんです。高校のときに何でも音読みで読む先生がいて、出席を取るときに「グギ」って呼ばれたのでそこから(笑)。濁音って気になる音だし、クリエイターって興味惹かれないと仕事来ないんじゃない、と思って(笑)、会社に入ってすぐ名刺も勝手に「グギ」に変えちゃったんです。

---では、お仕事のお話に入るんですけれども、実際仕事をしていて大変なとき、どうやって乗り切ってますか?

秋山:僕がやっているアートディレクターって、関わる仕事のバリエーションがすごいあるんですよ。今やってる仕事のジャンルで言うと、広告のグラフィック、ポスター、ビルボード、新聞広告、雑誌広告、CMの企画や演出、パッケージデザイン、CDジャケットのデザイン、写真集のデザイン、雑誌のエディトリアルデザイン、本の装丁、ロゴデザイン、あとNHKの子ども番組のキャラクターデザインとかもやってるんですけど、そういうのを同時に走らせてるイメージなんですよ。

で、僕はもともと飽きっぽいので、そのときやっていることに行き詰まったな~と思ったら、別の仕事をやるんです。そうするとけっこうスッキリして最初の仕事に戻れたり。全然違うことをやると、いろんなヒントがあったりして戻って来れるんですよね。ずーっと同じことを考えてうまくいくってことはそんなになくて、行ったり来たりしてるから、改めて集中できたり新規に考えられたりするんです。

---体力的に疲れたときはどうしてますか?

秋山:マッサージに行きますね。昼間でも空いた時間に。あとは、週1くらいでパーソナルジムに行ってますし、移動するときも歩ける範囲で歩いたりして体を動かすことを意識してます。

---チームで仕事をするときに反りが合わない人がいたときはどうしますか? たとえば、クライアントさんで「この人嫌だな」みたいな。

秋山:代理店にいた20代のとき、あるクライアントですごい嫌な人がいたんですよ。なぜか何があっても怒鳴られる、という。

---えー!?

秋山:そういう性格だったみたいなんですけど、ほんとすごい嫌で、円形脱毛症になっちゃったんですよ。25、6歳くらいのときかな。でも逆にそこから気持ちが切り替えられたんです。20代の頃は、どんな小さな仕事でも自分がものすごい頑張ればいいものができると思っていて、すべてに全力を出してたんですけど、「ほんとにこれは自分がやんなきゃ」ってことや「これは絶対いける」ってことには全力を出すけど、それ以外は「ちょっとこれぐらいにしといて」ってするようになった。

みんなうわべだけでも全部同じように「100%の力出してやります」とか言ってるけど、まあ実際そんなことないじゃないですか。手を抜くって言うと言い方は良くないんですけど、バランスってあると思うんですよ。そうしたらすごく気持ちが楽になって、そうすることで自分のやりたいデザインも分かるようになってきた。

---それはいい効用ですね。

秋山:サラリーマンの立場だと自分の意思以外のところもやらなきゃいけないことがいっぱいあると思うけど、今はフリーっていうこともあって仕事を選べるから、ほんとに嫌な人と仕事することはないです。仕事を受けるときに「なぜその仕事を受けるのか」っていうのはいつもすごく考えています。

広告としてすごく面白いものをつくれる、とか、ギャランティがいい、とか、そのブランドをやりたかった、とか、一緒にやる人が好きだから、とか、出演するタレントさんが昔からファンだったから、とか、その人から受けた仕事だったらやる、とか。仕事によってモチベーションがそれぞれあって。その中に嫌な人がいるな、と思ってもそれを勝手に自分で見えないようにしてますね。

---そっちに意識をフォーカスしないっていうことですよね。

秋山:そうです、まさにそういうことです。フォーカスをどこに当てるかっていう。「合わない人の良いところを見つけて、努力して近づいていけば人間関係は良くなります」とかよく言うけど、そんなことする必要ない(笑)。

AKB48「さよならクロール」

---では、チームでお仕事されるときに、結束を高めるためにしていることはありますか?

秋山:打ち合わせのときに面白いことを言う。何回も仕事したことあるおなじみの人とは、打ち合わせの半分くらいがね、関係ないくだらないこととかを話してて。そういうのが大事なんですよね。それで盛り上がったり、意外と新しいアイデアが出たりする。たとえば、そのスタッフの中の突っ込みやすい人をいじって面白くしたりとか。

---会議の最初は本題に入らない、みたいな感じなんですか?

秋山:そのときどきですね。本題に入ってるときでも全然脱線するし、その辺は阿吽の呼吸とかいろんなバランスがあるから。たとえば新入社員がそれやると墓穴を掘る(笑)。やっぱり経験がないとね。

---話題としてはどういう種類のものが多いんですか?

秋山:まあ時事ネタが多いんじゃないですか。世間で話題の政治家や芸能人とかね。映画の『渇き。』がすごかったね、とか。それが何かのきっかけで本題とつながったりするんです。

常盤薬品工業「眠眠打破×秋元康」CM

---具義さんの「ここぞの瞬間」というような、切り替えスイッチが入るような勝負時間ってどういうときですか?

秋山:もちろんプレゼンの前は勝負時間ですね。あとは、企画を決めるときとか、スタッフで案出しをするときとか。あとは、意外と地味なんですけど、入稿直前と校了直前。文字間とか細かく見て、デザイナーに指示を出して直すんですけど、そこは結構大事。ずっと集中してると疲れちゃうんで、逆に言うとそれまでの間はちょっとゆるくしてるんですが、力を入れるときはそことそこ、ってだいたい決めてますね。

---そういう勝負時間のときに習慣にしていることはありますか?

秋山:スタッフがいる部屋を離れて、ドアを閉めて一人でもう1回良いか悪いか考えるんです。最終のことを決めるのは別の部屋で1人で。

---具義さんにとって「こういう人とは仕事がやりやすい」っていうのはどういう人ですか?

秋山:視野の広い人。サッカーに例えるとディフェンダー的な要素の強いミッドフィルダーのような動きができる人。僕が想定している人は制作営業の人なんですけど、クライアントのニーズとクリエイターの思いとのバランスを取って、良いパス出してくる、みたいな人がいい。クライアントの言ってることをそのまま伝えてくる人もいるんですけど、そういうのが一番クリエイティブ側が反感を持つタイプですね(笑)。だったらクライアントに直接聞けばいいわけで。「いなくていい、時間がかかるだけだ!」みたいな(笑)。

サッカーを観てると、姿勢が良くて、確実に皆の動きを見てパス出してる人とそうじゃない人っているじゃないですか。前方が見えるのは当たり前だけど、ちょっと後ろまで見える視野で仕事ができる人が、やっぱりどこの業界でも大事なんじゃないですか。

---では、お仕事をされていて一番グッとくるときはどういうときでしょうか?

秋山:予想以上に効果があったり売れたりして、世の中を動かすとき。とくに、広告だけじゃなくてパッケージまで関わってるときが一番やりがいがあるというか、世の中を動かした感がありますね。たとえば「マルちゃん正麺」はパッケージと広告を担当したんですけど、袋麺自体が停滞していたところで、もちろん東洋水産さんの技術と美味しさがあったというのは前提としてありつつも、火をつけるきっかけになれた。そこから他社さんも追随してきました。そういう仕事ができるとすごく「やった感」がありますね。

2014年7月30日(水) 19時30分 writer 奥 麻里奈